悪魔のささやき
森の中を走っていると、自分が踏みつけた枝が跳ね返って脚に当たるみたいだ。鋭い痛みとピシッという音とともに、筋肉に強い収縮が起こって、その後痛みがでるという経験を、何度かしてきた。全日本リレーの前日トレコースも、2番への登りでふくらはぎに鋭い痛みが走った。念のためスピードを維持してみると痛みは増し、軽い吐き気感さえある。やっちまった!患部は明らかに腫れ、熱を帯びている。チームメイトの和久田に確認してもらうが、間違いなかった。
田濃監督には、場合によっては選手交代の可能性があることも告げた。体調が悪くないだけに、ショックは大きかった。期待という認知的成分がなくなった生理的覚醒状態は不快感以外の何者でもなかった。唯一の救いがあるとすれば、今回の大会ではトレーナーの方が会場で選手のサポートしてくれることだった。歩いたり走ったりができないほどの痛みではない。彼らならなんらかの知恵があるだろう。
当日の朝、トレーナーの方に挨拶をし、「恥ずかしながら、僕が第一号の利用者になってしまいました。」といいながら、施術をしてもらった。昨日の様子や、これまでにも似た状態があったことを告げると、「肉離れじゃないと思いますが、切れているかもしれませんね」という回答だった。これまで何かがあたっていたと思っていた音と鋭い痛みは筋断裂だったようだ。
見てもらった高橋先生は、丁寧にマッサージをして筋の緊張をほぐしてくれた。足の形や親指屈曲の不足がこの障害の原因だろうということも教えてくれた。「足底盤入れたら、走りが劇的によくなりますよ。また全日本がねらえます。」悪魔のささやき・・・。
レース展開がやや消極的だったのは仕方ない。昨晩の時点では、走れるかどうかは五分五分だと思っていたことを考えれば、順位を下げずに還ってこれただけでも上出来だ。12月以来の期待感、失望、緊張、不安、忍耐、全ての精神状態を満喫した。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント