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2011/01/19

英語で書け

 後期の授業の準備の一環で、認知心理学の英語のテキストを通読した。定評のある教科書だが、古い版をなくした。今年発行された最新版を買ったのだが、古い版をなくしたのを感謝したくなるほど面白かった。それだけ改訂に著者がエネルギーを注いでいることにも胸を打たれた。
 先行情報に続いて提示される情報処理が(しばしば無意識のうちに)促進されるプライミングという現象の説明の中で、カプランという研究者のエピソードが紹介される。「彼の実験の被験者は、(普通あり得ないことだが)学位論文審査会のメンバーであった(日本では、だいぶ前だが審査結果に悲観して自殺者が出たことがあった。学位論文審査会とは学位を習得しようとする人にとって、それくらい高いハードルである。その審査メンバーを対象に実験すること自体、日米の違いが出ていて面白い)。私もその一人だった。彼は、いくつかのなぞなぞをだした。『緑の家の中に白い家があり、その中に赤い家がある。その中には白人(whites)と黒人(blacks)がいる。これなあに』。私は恥ずかしいことにそのなぞなぞが解けなかった。カプランは、テープレコーダーとマイクロフォンを渡してくれた。これから一週間のうちに、マイクロフォンが不定期にビープ音を発する。その時、なぞなぞの答えを思いついていたら、録音してください。・・・私はある時、トイレから出てきて、突然答えが閃いた。『俺って天才!』と思って、次のビープ音の時に、「答えはスイカだ!」と意気揚々として吹きこんだ。
 実はトイレにはスイカの絵がカプランによって張られて(プライムされて)いたのだが、私はそのことには全く気付いかなかった。これはただ一つの問題に対するまぬけな被験者の逸話に過ぎないのだが、被験者全体として(その中にはノーベル賞受賞者もいたのだが)、プライムされたなぞなぞはそうでないなぞなぞに比べて2倍の正答率だった。」。
 海外の研究生活を羨ましいと思うことはめったにないが、こんなエピソードを聞くと、羨ましく思う。ゼミでは常々心がけてはいるが、そんなおもしろさを味あわせてくれた学年は数えるほどだ。
 ほったらかしにしていた論文を改稿のために読み直している。日本語で投稿するつもりだったのだが、「英語にして、この結果を世界に向けて問え!」そんな内なる声が聞こえてきた。

余談:
 先日のセンター試験現代社会の第一問は音楽番組のDJの語りという設定で「今の曲はプリンセスプリンセスの「diamond」でした。と始まり、ありえないことだが、音楽業界の状況が語られ、そこが設問に使われ、最後が「ところで今日は、センター入試の日ですね。次の曲は受験生への応援ソングです。受験生のみなさんがんばってください!」で終わる、思わずほほえみたくなる設問だった。

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