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2011/01/25

専門家

 「浜はうど浜・・・」平安時代からの絶景の地、それが清水なのだ。それを今回の有度山ロゲイニングのキャッチフレーズにしたのだが、念のため図書館で注釈本に当たってみた。なんと枕草子には異本が4つ。そのうち能因本では「浜はそとの浜」となっている。一方三巻本では「浜はうどの浜」。境本と前田本は三巻本が底本らしいので、ここは能因本vs三巻本という構図になる。
 アシスタントの姉が高校の国語の先生なので聞いてみた。単純に言うと能因本の方が信頼性が高いらしい。文字面を見ていて気づいたことを聞いてみた。「「そとの浜」と「うどの浜」、かなで書いていたら似てますよね。それに二つ目以降の浜の名前はみな固有名詞なので「そとの浜」は不自然、かなを書き取りか読み取り間違えた可能性はないんでしょうか?」
 彼女曰く、「そとの浜という概念的なものが挙げられているなら、対比概念として「うちの浜」があるんでしょうね。それに対して「そとの浜」の方が趣深い、その後固有名詞を挙げるという構成も、るいじゅう段(漢字不明)ではあるんです。」確かにそう言われてみると、比較対象の「うちの浜」(たとえば瀬戸内海とか(?))よりも(荒々しい「そとの浜」が良くて、「具体的には・・・浜」だという構成もあるような気がする。るいじゅう段には、「森は・・・」「川は・・・」といった、「あんたも実は地形萌え?」と思うような段がいくつもある。当然内容的な深みはないので、入試には取り上げられない。「日記段はわかるんですけど、るいじゅう段はあまりなじみがないので・・・」と彼女は謙遜するが、専門家だけあって、視点は明快かつ説得力がある。

(彼女はなんとその晩、大学時代の恩師にまで電話をして、この件を調べてくれた。「論文が書けそうなほど」面白かったとか・・・)。

 清少納言が書いたというのはもちろん売り文句だが、異本で間違えられた(?)ということは、それだけ人口に膾炙していたことの証でもある。平安時代、各地の景観の情報はどのように都に伝えられていたのだろう?

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