地形萌えを育てる
世界遺産ばかりが有名なユネスコだが、ジオパークの認定を行っていることはわりと知られていない。その名の通り、地質学的に貴重な自然を保護すると同時に、それを訪れた人たちに分かりやすく展示したり、認定されたガイドが案内することで、その土地の成り立ちをよりよく知ってもらおうという、世界遺産よりも遙かにユネスコ的な発想の産物だ。そのための手段が、ジオツアー。ちょっと高尚な語感だ。
地域からすれば、地域の観光の目玉が増えることで集客が期待できる。特に欧米では、こうした「お勉強ツアー」の人気が根強いため、世界ジオパークに認定されると、海外からの観光客も見込める。静岡でも、伊豆が名乗りをあげているし、富士山も世界遺産よりよほどジオパークの方が合っているのではないかと思う。
今回は同僚の火山学者と伊豆総合高校を訪れ、彼がガイド役になって高校生にジオツアーを体験させ、その成果を今度は高校生が小学生のガイド役になることで生かす。それによって高校生たちの興味や意欲がどのように変容し、またガイド役になることで知識の整理がどれだけ進むだろうか。そのあたりの検証が、僕のやくどころだった。
同僚は、もともと伊豆の火山が専門だけあって、2時間の講義でも語り尽くせないほどの知識と、伊豆の火山に対する好奇心と愛がほとばしる。最初に連れていってくれた船原のスコリア丘は、採石場によって半分が削り取られているおかげで、火山学の教科書にでもでていそうなスコリア丘の構造が、露頭にきれいに現れている。最後に訪れた浄蓮の滝では、柱状節理や柔らかい基盤の浸食の様子がよく分かる。なんのことはない、ジオパークとは地形萌えのメッカ、ジオツアーとは地形萌えツアーだ。
浄蓮の滝の入り口には、伝説についての看板、滝壺には、天城越えの歌碑やら珍しい植物の説明書きはあるが、肝心の地形についての説明は一切ない。観光客は滝の景観に見とれはするが、その背後にある大地の歴史への関心は薄い。ジオパークへの道のりはまだまだ遠い。
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