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2010/06/22

二つの危機管理

 先週末に浜名湖で起きた事故で、月曜日、県教委は県内にある5つの野外活動施設を集めた会議を開いたことをニュースが伝えていた。またマニュアルの見直しと徹底が指示されたようだ。
 こうした事故が起こると必ずのように「マニュアルの再点検」が指示される。それはそれで意味のあることだとは思うが、それが問題を半分しかカバーしていない事が果たして意識されているだろうか?
 今回の事故でも、青年の家では、「警報では取りやめ。注意報では状況に応じて学校と協議」という事前に取り決めた通りに行動している。いわば「マニュアル」に従った訳だ。そして、事故は「マニュアル」のグレーゾーン、すなわち「状況を見て判断」に従うことによって発生した。自然環境が非分節的である限り、どのようにマニュアルを整備しても、必ずグレーゾーンが発生する。そして自然環境の教育効果の大きな部分は、そのグレーゾーンにあるのだから、それをゼロにすることはできない。仮に「注意報が発生した時には活動をしない」と決めても、注意報が出ていないからといって、風雨が全くない訳ではない。時には注意報時よりも激しい雨風に見舞われることもあり得る。
 さらに厳しくしていけば、完全に風雨の無いときしか活動はできないことになる。それでも、活動の危険はゼロになるわけではない。それを完全にコントロール下に置こうとする時、自然体験活動として意義があるのかは疑問である。
 グレーゾーンへの対応力についての指導者の資質向上が問題の解決には必要である。それと同時に、組織が通常の指示系統によってグレーゾーンの問題を解決することは非常に困難なことも念頭に置かれる必要がある。
 その日、私は、藤枝の学校に招かれ、7月に自然体験に向かう子どもたちのためのリスクマネージメントの授業を行った。KYTシートを使って子どもたち自身に危険を発見させたり、評価させ、また友達と議論させる授業だ。自分自身効果の検証を行った訳ではない。本当に効果があるのだろうか?そう思って教頭に尋ねると、昨年は、活動の中でも、自分たちで「これ危ないから片づけよう」といった動きがあったという。適切な危険の評価がでてきいたかは分からないが、少なくとも自分たちで危険に気づかなければという意識の醸成には役立ったのかもしれない。

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コメント

先のアカデミーの目的である「自立したランナーになる」ことの基本理念は「セルフレスキュー」でした。これは決して自然から逃避することでもなく、自然を侮ることでもない。「自分」を客観的に見つめ、「自然」との相対的関係を把握することと理解しました。ガイドが、リスク丸請け屋になる前提のツアーは、ダメだと思います。

投稿: 千場武彦 | 2010/06/25 18:59

たとえ公共施設とは言え、マニュアルで危険を管理しようという発想は、(なれないはずの)リスク丸請け屋を目指すことのように思えてなりません。

投稿: shin | 2010/06/25 19:14

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