« 松代ロゲ2 | トップページ | 岩崎元郎さん講演会 »

2010/05/12

禅問答

 受付の処理が続き、大会が本当に無事始まるだろうかという不安と同時に、それでも数週間後には大会が終わっているのだという複雑な心境の中、中津川に向けて移動する日が来た。大会が始まれば限られた睡眠時間の日々が待っているが、反面、自分たちがしていることが形になりつつある達成感、他の運営者と一緒に仕事をしているという充実感が得られる。現地にいけばきっと元気になれる。
 鬱を経験して以来、長距離ドライブはもっとも苦手な行為の一つになっていたので、本大会運営上の最初の難関は岐阜までのドライブであり、もっとも懸念されるのは5月5日にバンケットが終わって、きっと虚脱感と疲れの入り交じった中で、無事車を運転して静岡に帰れるかということだった。
 連休初日の交通渋滞は大したことはなかったが、長距離ドライブのダメージは予想以上で、先が思いやられる。
 ほぼ予定通りの13時ごろ、中津川に着く。市役所分庁舎であるにぎわいプラザの1階では、数多くの市職員の方がパーティションを立てたり、机を運んだりしている。最初は感触が今一つだが、大会規模や参加国を聞く中で、中津川市も本腰を入れて取り組んでいただいたということだ。その象徴的な出来事が、市長さん直々のスプリント大会の市民クラス出場と、開会式での挨拶だった。プログラムに首長挨拶が載ることは少なくないが、多くの場合、代理の出席が多いなか、直々に会場に来ていただくどころか、自ら参加される。30日のモデルの日の夕方には市長主催のレセプションも設けていただいた。中津川市全体のバックアップには、こちらもずいぶん元気づけられた。
 
 岐阜ステージは、牧ヶ野さんの活躍で、当日には心配することはほとんど無くなっていた。総務の僕にとっての心配事は宿舎であった。国立大学の研修施設を借りたものの、こうした施設になじみのない外国人参加者に、布団の畳み方から食堂や風呂の時間まで、細かい規則を守らせることが不可能なことは容易に想像がついた。その監督を静大と名大の女子学生2人に任せた。心細そうなWさんTさんを施設に残して運営宿に戻るのは、本当に気が引けた。
 案の定、二日目に退所した宿泊者の部屋のあまりの乱雑ぶりに管理人さんがキレたという報告が入る。菓子折を持って謝りにいく。旧知のカザフスタンのボスのウラジミールには、「入所の時言われたように部屋をきれいにしてね。じゃないと、この子(女子学生)が困るんだからね」と釘を指し、出発時にもにらみを利かせにいった。後から、「ボスの部屋は、シーツも、元の折り目通りに畳んでありました」という報告があった。胸に手をあてて僕の小言を聞いていたウラジミールの姿が思い出された。
 岐阜入りして3日目、ようやくジョグする時間ができた。疲れ切っていて、楽しくも気持ちよくもない。そんな時、前の晩に山西先生が30年前にこの地で開催されたフォークジャンボリーの時、近所に住むAさんに、「子どもはなぜ走るか?」という禅問答のような問いを投げかけたという話しを思い出した。山西先生の答えは「楽しいからだよ」と聞いて、前の晩はなんとなく違和感を感じていたが、走りながら、「何も考えていないからだ」という僕なりの答えに思い至った。どんなスピードだろうが、この一歩が辛いことは滅多にない。先のこと、これから走るべき距離の事を考えるから、それに滅入り、大人は走らなくなる。
 パールズのゲシュタルト療法も、キーワードは「いま、ここに」だったな。今の自分に焦点を当てる。別にどこかが痛い訳でも、辛いわけでもない。走ることはその連続にすぎない。だとしたら辛いはずがない。その後のランニングが別もののように感じられた。パールズ、恐るべし。

Simg_4532

▲ミドルチャンピオンとなった鹿島田浩二。

表彰式で名前を読み上げる時、思わずじんときて声が上擦ってしまった。

Simg_4540

▲ミドルの日、女子2冠に輝いた中国のリ・ジが、随分昔に送ったオリエンテーリング本のお礼だといって、北京ダックのレトルトを持ってきてくれた。いかにも高そうな袋に入ったこいつが、ありえないくらい旨かった。中国チームはこの前日から旭高原の宿泊で、日本語のできるリ・ジにめんどくさい通訳を頼んで、嫌な顔せずにあれこれ世話を焼いてくれた。リ・ジ、礼に篤いし幼長の序は心得ているほんとにいい奴だ。ミドルの日の成績が悪かったのも、そのせいかと思うと申し訳ない。リ・ジの別の顔はリレーの日に見ることになるが、それは次の回のお楽しみ。

 

|

« 松代ロゲ2 | トップページ | 岩崎元郎さん講演会 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 禅問答:

« 松代ロゲ2 | トップページ | 岩崎元郎さん講演会 »