知識と生きる力
「中高年登山ブームの仕掛け人」とされる岩崎元郎さんが出した「山登りの作法」を読んだ。帯にある「奥深い山登りの作法をこの1冊ですべて習得」というのは大げさにすぎる。むしろ登山の入り口に立つ時、これくらいは知っていてもいいだろうという作法が50あげられている。
作法25では「地図は見るのではなく「読む」べし」とあり、等高線間隔と距離の換算の話が、作法33から36では気象の話が出ている。特に作法33と36に出ている雲の種類とそれによる観天望気や前線の話は、昔は中学校の理科で習ったものだ。僕自身それを習って以来、天気の見方が変わったという記憶が今でもある。教育心理学者の西林さんは、知識は覚えるものではなく、世界を見る道具であるという旨の発言を著書でしているが、理科の天気の話は僕にとってまさに世界を違った視点からみるための道具だった。
それが山の世界では自分の身を守る作法の一つであり、その意味では生きる力とも言える。 昨今、教育界では「生きる力」の育成のために体験的な教育への関心が高まり、知識を得ることが、ある意味「虐待」されている。しかし、その前に学校でしかできない(できにくい)、知識を世界を見る道具にするという教育に、先生方はもっと誇りを持ってもよいのではないかと思う。
少なくとも理科の知識は山では、それこそが生きる力になるものが数多くある。
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