饅頭
大学オリエンテーリング部の学生が、インカレでの結果が悔しかったと見えて、「アナリシスを見てください」と言ってやってきた。二人でアナリシスを検討して、アタックまわりの地図が全然読みとれていないことが分かった。実際、彼女のこのレースでの破綻はアタックでの大きなミスからもたらされている。「これから100レース分、各コントロールのアタック周りのプランニング練習をしたら、インカレできっと入賞できるよ」と伝え、手元にあった適当なコース図を何枚か与えた。
それから約2週間たって、彼女は、クロッキーブックに描きためた、プラン図を持ってきた。とにかく2週間にわたって続けることができたのだ。それだけでも、目標に向けての大きな一歩であることは間違いない。たいていの部員は、このレベルのハードルさえクリアできないのだ。
しかし、驚きはもっと別のところにあった。インカレの数日後、はじめて描かれたプラン図には、同心円状の饅頭のような等高線があった。それは彼女にとっては「丘」という以上の何者も意味していなかった。ところが2週間たった図を見ると、地形は見事に多様な形に変化していた。特徴的な尾根の出っ張り、二重になった稜線、それがはっきりプランに表現されていた。このプランニング課題は、「地図を写してはいけない。必ず記憶の中に描き込んで、それを図に表現するように」という設定で行わせた。個々の地形の特徴が図に表現できるようになったという事は、図上のこととは言え、彼女の中で地形の個別的特徴が意味を持って記憶に残るようになったことを示す。美術科の学生だという下地はあるかもしれないが、2週間の変容ぶりには、指示をしたこちらがびっくりした。100レース分やれば、ほんとうにインカレで入賞できてしまいそうだ。
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