裸のランナー
なんででたんですか?という質問を、早稲田大会のレース後、田島嬢から受けた。よもやそんな質問を受けるとは想像もできなかったので、答えに詰まった。「走りたいから」という以外に、この質問への答えがあろうはずがない。体育館では奈緒ちゃんからも「はるばるこんなところまで来たんですね」と言われた。今年度に入って2回目のオリエンテーリングだから、そういわれても仕方ないかもしれないが、僕にとっての早稲田大会は全日本に向けての重要な調整のレースであり、質と参加者が保証される大会だから、出られるならいつだってでたい。今年は、それより優先すべき行事がなかったというだけの話だ。
まじめに取り組んだレースの例にもれず、前夜の眠りは浅く、頭は疲れ切っていた。おかげでスタート前25分前に会場を出たにも関わらず、3分ほどいったところでナンバービブをつけていないことに気づいた。それでもスタートは間に合ったし、幸いなことに身体も軽かった。トレーニングの手応えを感じた。一方、地図読みは追いつかないし、レース慣れしている時にはありえない場所で止まって、進路を吟味してしまう。
地図交換をすぎたあたりで、前を走っている選手が上半身裸なのに気づいた。一瞬、世界選手権でのチェリ・ジョルジョのことが思い浮かんだ。世界選手権のリレーのアンカーとしてトップ集団を走っていたスウェーデン、フランス、ノルウェー、チェコの4選手の中で、スウェーデンのマルティンが枝を太股に刺して大出血した。併走していたチェリは、上着を脱ぎ捨てて止血にあたった。近づいてきたチェコの選手に「世界チャンピオンになれる。先に行け」と行ったが、当然のようにチェコの選手に、さらにノルウェー選手が加わり救出劇となった。マルティンは病院に着く以前に一時失神したというから、チェリの救出がなければ死亡していただろうと医師は語ったらしい。そしてチェリは他の2選手と一緒に上半身裸でゴールした。
彼も速いので、なかなか追いつかないが、7へのアタックで捉えて尋ねたら、ウェアを忘れてスタート時から着ていなかったらしい。出走させたのもどうかと思う。2枚のウェアのうち1枚を与え、なぜ裸で走ってはいけないのかを説教し、そのままレースを続けた。彼とは、北西のループの間一緒だった。
4分後の松澤には、最後のショートレッグで追いつかれた。いつものように、淡々と速いが、自分もトレーニングができているせいか、手の届かないところにいるようには思えなかった。最後は30秒くらいちぎられてしまった。
この2ケ月のトレーニングのおかげで、疲労を感じた中でも我慢してペースを維持することはできた。ナヴィゲーションはスピードのバランスがとれているとは言えなかった。練習不足なのと、心理的に疲れていたので、全く切れのない状態だった。だが、スピードと技術のバランスがとれていないことは、長い目で見れば好ましいことだ。優勝できるとは思えないが、エリートの上位でまだまだおもしろい戦いができる希望が見えてきた。
| 固定リンク
« その科学が成功を決める | トップページ | 投影 »
この記事へのコメントは終了しました。
コメント