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2010/02/16

投影

 ロゲイニングの普及や発展を語る時にしばしばオリエンティアから言われたのが、「ロゲイニングは本当にオリエンテーリングのためになるんですか?」という言葉だ。あるいは、「彼らは大会に出るけど、大会運営はしようとしない。仲間とは思えない」といった意見も聞く。オリエンテーリングは野外スポーツの中でも地図を使い自らの進路を決めるという点でかなり特異なスポーツで、その特異さからみれば、ロゲイニングとのバリエーションなど、外国人から見たときの標準語と関西弁の違いくらいでしかない。名前こそ違うが僕にとっては同じ「ナヴィゲーションスポーツ」の範疇だ。そして、運営をしようがしまいが、オリエンテーリング(あるいはナヴィゲーションスポーツ)を楽しむという気持ちは変わらないはずだ。だからオリエンテーリングを「うち」、ロゲイニングを「外」のように扱う表現にはずっと違和感を抱いていた。
 その漠然とした違和感は、「もし高校野球の女子マネージャー・・・」を読むことで、明確なものになった。「もし高校野球・・・」に「顧客とは誰か?」という問いが出ている。そして組織とは顧客に対して満足を提供するものだともあった。アウトドアで地図を使って冒険をすることを楽しいと思う「顧客」がいて、私たちにそれを提供する力があり、またそれが楽しいことなら、それだけで僕には十分に思える。だいたいどこのスポーツ界に、プレーするだけで大会の運営をしない人は・・・選手じゃない」スポーツがあるだろうか(まあ、その点オリエンテーリングは歴史的にやや特殊だが)。古参者にそんなこと言われたら、よほどの人じゃない限り、そのスポーツに根付こうとは思わないだろう。当然、普及なんてこともあり得ない。
 「もし高校野球・・・」には、こんなことも書いてあった。「マーケッティングは持っているものを提供するのではなく、顧客のニーズを聞くところから始まる(だったかな)」。大会に出たい(でも、大会運営はしない)という人が居れば、まずはそのニーズに応えることから普及は始まるだろう。その上で、「大会運営ってこんなにおもしろい!徹夜してハイになりながら運営したり、知らない人(特に子ども)がビラを握りしめて会場に来てくれたり、雨の中ずぶぬれになりながら準備したり、外国の監督を舌戦でやりこめたり、できるんだ!」そんな楽しさを大会運営をしている人が醸し出すことができれば、誰だって大会を運営してみたくなるだろうと思う。
 フロイトに投影という概念がある。自分が思っていることを相手の行動の背後に読みとってしまうことだ。ロゲイニング普及への「反感」は、なんだか投影のようで、ちょっと悲しい。

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コメント

オリエンティアは、自分たちが今、安い参加費で、自分たちがしたい形での競技が出来ていれば別に将来にわたってこのスポーツが日本で発展しなくても良いと思っているんじゃないですか。

投稿: ヒディ | 2010/02/17 00:24

もちろん、そういうスタンスがあってもいいんです。でもそれなら「普及」とか「人口減」とか叫ばないことですね。そういう道を選択したのですから。その齟齬が気になるのです。

投稿: shin | 2010/02/17 08:47

お久しぶりです。初めて、書いてます。
このスポーツの始まりはオリエンテーリングからなんでしょうけれど、ナヴィスポーツとしてはオリエンテーリングって究極なんでしょうね。一般的にアウトドア、ハイキングや登山の延長でロゲイニングの方が「わかりやすい」だろうなと思います。(最初に究極を知ってしまうとそれ以上のものはない??って感じ?!)
ちょっとズレるけれど、運営に携わった時にいつも心しているのは、使えるチャンスは出来る限り生かそう。(私にとっては)お客様(これは、普及としても)の気持ちになってやろう。運営者が楽しくやれれば、それは必ず参加者に伝わる。かな。
ロゲインを通じてオリエンテーリングの存在を知る人が増えていくのって、いいですよね〜。私にとっては、体力的に難しそうですが・・・・。

投稿: sekiko | 2010/02/17 10:49

「究極」も広がりも、どっちも究極なんだと思います。「究極」を追究することにも深みはあるし、広がりを追究することにも深みがある。
ぼくはよくオリエンテーリングを「盆栽」にたとえてます。「いきなり盆栽?ちょっとなあ・・・」。ガーデニングなら、とっつきやすいかみたいな・・・ガーデニングがロゲイニングあたりなのかなってことです。

投稿: shin | 2010/02/17 12:37

言い得て妙、ツボにはまってしまいました(笑)奥が深いですね〜(^o^)

投稿: sekiko | 2010/02/18 09:01

いきなり「もし高校野球の女子マネジャーが...」を買ってしまいました。まず、はじめのところで、当たり前のこですが、『連れて「いく」と決めた』と書いてあることに気がつきました。

オリエンテーリング界は、競技人口が増えたらいいな、普及したらいいな、と思うのではなく、たとえば、全都道府県にクラブができるぐらい普及させると決める、とか、全日本選手権、世界選手権、大学選手権、インターハイ等が開催されたらその結果がスポーツ面で取り上げるぐらい認知度をあげると決める、といったことが必要なのかもしれないですね。

投稿: ヒディ | 2010/02/18 21:24

普及ねた、みなさんお好きなようですね。
昨日大学院の英語の試験がありました。その出題文の中で「他者」と見なすことで戦争が始まる、とありました。オリエンティアにとってロゲイニングとか、周辺アウトドアスポーツは「他者」なんでしょうかね?
 仲間とみなせば世界が広がるように思うのだが・・・

投稿: shin | 2010/02/19 09:41

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