多様なイベント
誰もが気軽に出られるイベントも必要だが、(目標に応じた)その人なりの準備をし、ようやくその舞台に立てるイベントも、競技レベルを高め、その世界の奥深さを作り出していくためには必要である。トレラン界では、トランスジャパンがその筆頭であろう。限られた人だけが出ることができる点に大きな意味と意義がある。
また両者の中間には、本来この世界で必要とされるべきスキルを過不足無く要求し、レースというよりもそのスポーツに関わる規範を示すレースが必要だろう。ハセツネも本来はそんなイベントのはずだ(10時間を超える走行時間、夜間走行、少ないエイド)が、残念ながら、近年そのあたりはぐたぐたになりつつある。なにより、山岳関係団体が主催しながら、自然の中に入るにあたって、ナヴィゲーションを明示的には一切要求しないのは、いかがなものであろうか?
個々のレースのスタンスに対して異を唱えるつもりはさらさらない。しかし、界全体としてのバランスは必要だ。先週末開催した富嶽周回は、個人としての富士山麓という場に対する思いの結実であると同時に、トレイルを走る行為のスタンダードを示したイベントである。
ある程度の誘導はつけたが、道標のある登山道や遊歩道、または重要な分岐のない区間には一切誘導をつけないレースである。その分参加者には、1:25000を縮小した精彩な地図を提供し、地図で確認すれば確実にルートが分かるようにした(もちろん、地図だけでは常に確実なルートファインディングができないことは、通常のアウトドア活動と同様である)。
その分エイドでのサポートは充実させた。また各エイドに参加者は自分が必要とする荷物を全て預けることができる。距離は87km。食料や天候によっては用具の準備が、完走できるかどうかを分けるイベントでもある。
結果を見ると、大集団で林道を行きすぎてしまったり、難しいルートファインディングで道を間違えるなどのトラブルが随所で起きた。その割には「もっと誘導をつけろ」という苦情?はあまりなかった。選手の中には「そういうコンセプトを謳っているイベントなのだから、地図を読まない方が悪い」という考え方をした人もいたという。いずれも、このイベントが提唱する「アウトドアで自分ですべきこと」について、一定の理解を示してもらったということができるだろう。
もちろん、この考えには異論があろう。しかし、まだ発展途上であり、「競技場」についての明確なルールを持たない(一般のスポーツは競技場の大きさや仕様についても明確なルールがある)トレランのおいては、様々な考え方の余地がありえる。全体としてバランスが取れた社会が形成されることが重要だ。それと同時に「棲み分け」ではない、共存も必要だ。
おりしも第一人者の鏑木さんのイベントが今日行なわれていた。彼はどんなコンセプトでレースを準備したのだろうか?
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コメント
富嶽周回イベントの企画、運営お疲れ様でした。
私も(いろいろと苦労いたしましたが)楽しく参加させていただきました。
今回のイベントでは、次の事を学べました。
1、集団での道迷い
村山登山道入り口での集団ロストでは、誰かが正しい道を示してくれるだろうという他者依存の集団心理での標識見落とし。
2、疲労状態での道迷い
疲労状態下(又は精神的に追詰められた状態)では、人は自分の都合の良いように考え、冷静な判断が下せない。
3、基本に忠実が一番速い(安全)
「道に迷ったと感じたら、現在位置が確認できる地点まで戻る。」この基本が守られていれば、結果としてロスを最小限に抑えられる。
今回のように、”サポート付き”で、ある程度肉体的に過酷な状況を体験出来たことは良い経験となりました。
来年も、開催を楽しみにしております。
投稿: Diet Go Go!! | 2009/11/17 00:06
参加ありがとうございました。
来年もやりたいんですが、課題満載です。まずは時期の問題をクリアしたいですね。雨とは言え、今年は気温の条件がこの時期としては良すぎました。
ちなみに僕と朝霧がタッグを組んで悪天候だったことはないので、責任の一端は奥宮さんにあるとか・・・(本人談)(笑)。
投稿: shin | 2009/11/17 18:15
2005年開催だった第1回TTRの説明会で、地図が読めないという参加女性に、主催者がでは来年勉強してから参加して下さい。今年の参加料はお返しします・・・と。
当時少々物議を醸したこんな1件がありましたが、やはりこれは正しい判断だと。
11年前、ハセツネに初参加した折、トライアスロンがなんて過保護な競技かと感じてしまいました。そして、今回、トレイルレースがいかに至れり尽くせりかと感じ入りました。
富嶽周回では、ガイドラインはしっかりと示され、サポートも手厚い。だけど肝心の所は読図せよ、しっかり自己責任で通過せよ・・・よかったですよ。
私が誘った仲間の一人が、今までで経験した中で、一番苦しくて、一番面白いイベントでしたと語ってくれました。
私はとにかく(大いに反省もしているのですが)面白かったの一言に尽きます。
ありがとうございました。来年以降の開催も心より期待しています。
投稿: ハリ天狗 | 2009/11/17 21:32
ありがとうございます。励みになります。時期、その他課題については検討して、よりいいイベントにしていきたいと思います。
投稿: shin | 2009/11/18 08:45