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2009/10/28

固有振動創作おもちゃ「ゆらゆら」

 昨年共同研究をしている同僚にそそのかされて災害情報学会に入ったら、いきなり今年大会が回ってきた。先週末は二日間学会参加、運営手伝い。
 日曜日午前中、僕が担当していた部屋のセッションは防災教育だった。ほとんどは「こうしました」「でも検証はないよ」というつまらない発表ばかりだったが、「世界一安あがりな固有振動創作おもち「ゆらゆら」の発表は面白いばかりかためになった。発表者の納口さんは、防災科学技術研の研究者の方で、年間200回は「ナダレンジャー」に扮して防災教育をするという。その中で考えついたのが、この「ゆらゆら」という教材である。世界一安上がりを自負するだけあって、制作費1円以下。紙はそこらにあるものなんでもよく、それにホチキスがあればできあがり。図のように紙を丸めて、大きさの違うものをホチキス止めすればできあがり。長さによって固有振動数が違うので、揺らす周期によって違う長さの紙が揺れるというデモンストレーションだ。これだけなら、なんてことないが、納口さんのすごいところは、その紙をハート型にしたり、星形にして、「星のまたたき」といったおしゃれなネーミングをする、もっと凝って部屋に飾れるオブジェのようにしたり・・・。学会らしからぬ発表に聴衆一同に大受け。僕も記念に一つもらってきた。これは免震構造をモデル化したもので、固有振動数が同じ二つのゆらゆらをくっつけると、揺すっても下のゆらゆらはゆれず、上のゆらゆらが揺れ、それで免震構造(正確には制震構造か?)の仕組みを体験できるのだそうだ。
 こういう遊び心は、普及の様々な場面に応用できそうだ。僕らがやっている「地形萌え」なんているのも、もう一工夫すれば、地図好きへの大ブレークにつながるかもしれない。

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2009/10/19

今更ながらの里山ハイライト(2)

 里山どころか、ハセツネも終わってしまった。超長距離を2週連続するとどうなるのだろうか?全く持って未知数だった。最悪の場合、ハセツネは走る前から棄権ということもありえた。しかし、里山のダメージは驚くほど小さかった。里山の続きを振り返ってみたい。
 三峰へ「お見事」な直登をした後は、台地上の気持ちのよいシングルトラックが待っていた。そのトラックが終わるころ、CP6に到着。CP7も、新しい車道を下って、徒歩道に折れて入れば自動的に付ける。そう考えたのが甘かった。徒歩道に入ってからは延々登りで、僕が遅れだした。遅れるということはそれだけ地図読みの余裕がなくなる。道を詰めていけばなんとかなる。そう思って宮内・小泉が先行するのをひたすらついていった。
 でもおかしい。地図では尾根を緩く巻いて、隣の沢の入るはずだ。沢の方向も元の方向のままだ。分岐を見落としたか?3分ほど進んでも右に巻いていく気配がなかったので、戻ろう!と声をかけた。宮内が「車があった時点で警戒しなくちゃいけなかった!」と叫んでいる。地図上で道が巻いているはずの川の渡河点まで戻るが、道が見あたらない。しかしよく見ると、川沿いに廃道らしきものが見える。これが道かどうかは確信がない。しかしとにかくこの尾根を巻かなければならない。
 尾根を巻き上がって反対斜面を見ると、廃道らしきものがある。高度を上げていくのはおかしい気がするが、今はこれが一番可能性がある。そう思って進むが次第に廃道らしさも消え、ただの藪になってしまった。フットならなんということのない藪だが、MTBを担ぎながらはこたえる。そんな時、うしろから、「カード落ちましたよ」という小泉の声が聞こえた。「ナンバーカードが落ちたのだろう」と聞き流したが、宮内が「村越さん、チェックカード!」と言っている。僕はザックのウェストベルトのポケットからチェックカードを落としていたのだ!ウェストベルトのポケットのファスナーのつまみにクマ鈴を付けていた。それがやぶに引っかかってファスナーが開いて中身がこぼれていたのだ。あまりに穏やかな口調に、必須装備を忘れてアホで賞をもらったチームの「アホ」ぶりなど取るに足らないほどの行為をしてしまったという実感がなかなかわかなかった。これがなかったら当然失格である。こうして我がチーム最大の窮地は小泉によって救われた。
 斜面の感じからして下らなければならない。そう思って下り、谷の中にでるが、まだ斜面の中腹にいるようだ。やや上に流れている気はするが、確信が持てない。こんな時は、主催者への対人イメージが成否を支配する。主催者の技量に疑いを持つと、こちらも合理的かつ厳密に動こうという意思がそがれてしまい、結果としていい加減な動きをする。イーストウィンドへの評価が一瞬頭をかすめ、最善策である下に下ることにした。50mほど下ったところにぽつんと廃道があり、その曲がりにCP7が見えた。
 
 たかだか20分ほどのようだが、チーム朝霧はMTBオリエンテーリングとフット(スコア)オリエンテーリングのトランジットであるCP9へついた。MTBオリエンテーリングはたったの6km強。さっさと終えれば、フットオリエンテーリングは3:30程度で終わるだろう。CP10まで1時間掛かったとしても、CP10では21時のスタート開始時刻までかなり休めそうだ。
 そう思ったのは全くの楽観的観測だった。6km強のMTBオリエンテーリングに2時間半もかかったのだ。深い谷に高い尾根。登りのかなりは担ぎであった。道を回っても結局アップダウンがたんまりある。「これは、MTB担ぎフットオリエンテーリングという新しい種目だな」と悪態をつきながら、ゴール。確認はしていないが、他のチームとのタイム差はあまり開かなかった。ルートミスがおおかったのだろう。ちょっと消極的過ぎたかもしれない。
 それでもこの時点で、CP10へのスタート開始時刻まで4時間10分もあった。これは当然全コントロール取りでしょ!MTBでかなり体力を消耗した僕ですら、当然取れると思っていたし、小泉も宮内もそれ以外は考えていない様子だった。当然全部取るための最短ルートを計画し、実行に移す。後半日が暮れることを予想して、易しいCPの多い南部を後ろに回す。
 森は素晴らしかった。藪もひどくはなく、CP位置も地形上の特徴に正しく置かれ、気持ちよいナヴィゲーションができた。主催者の苦労を一瞬だけ忍んだが、実際設置した田中正人は二日間も設置に費やしたという。うんざりしたのは、ほとんどのCPが入っては戻るという出戻りだった点だ。特に西側のCPは全て30m以上は下って登り返すというボディーブローのようなダメージを僕たちに与えていった。MTBでかなり消耗していた僕は、できるだけCPに近づかない努力をして、全て小泉にとってもらうことにした。
 前半は2時間掛からず回れたので、このまま全部取るつもりで後半のエリアに入った。しかし、だんだんペースが遅くなってくる。しかも、17:30を過ぎると暗くなり、ナヴィゲーションのペースも落ちる。
 制限時間まで30分で、残すところ3つとなった。直感では「行ける!」と感じている。宮内も「楽勝です」みたいなことを言っている。だが冷静に計算してみることにした。霧ヶ峰の二の舞はごめんだ。
 上の分岐まで4分、その先14まで往復で10分、13をとるのに5分以上、残り10分でゴールは厳しい!直感とはだいぶ異なる結果に愕然とした。その計算を宮内に伝えると、彼女も「ほんとですね」といって納得してくれた。実際14は、いくだけで10分以上掛かっていた。無理して13に行ったら、間違いなくアウトだっただろう。
 2位の芝やんチームからは、「全部を狙って大減点を期待してたんですけどね・・・」と後で言われた。
(続く:予定)

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2009/10/15

この秋のイベントサマリー

秋のナヴィゲーションシーズン(?)も深まりつつあります

 9/30、10/14の屋内講習は無事終了。なかには、「先日迷って一晩ビバークしました」という人もいて、真剣に聞いていただきました。

●10月31日/11月1日

 国際山岳ガイド長岡さんとのコラボ講習。ハードトレッキング・セルフレスキュー+読図

基礎の屋内講習と実際に山歩きをしながらの実践講習

詳しくはこちらを、

http://www15.wind.ne.jp/~kenny/E090229.html

●11月7日:アラジン静岡店をベースに実技も交えた読図講習を行います。賤機(しずはた)山ハイキングコースを歩きながらの実践的地図読みを村越・宮内で講習。

くわしくは、
http://homepage2.nifty.com/MNOP/event/event.htm

●11月8日:エイ出版主催「フィール・アース」アウトドアイベント 本栖湖で、読図講習とミニロゲイニングが開催されます。11/7日には、間瀬さんと鈴木博子さんのトレランセミナーもあるようです。

http://www.ei-publishing.co.jp/feelearth2009/index.html
詳しくは上記から

●11月28/29日(オリエンテーリングin朝霧と朝霧ロゲイニング)

宿泊を伴うオリエンテーリングin朝霧は、定員が迫っています。

詳しくは

http://homepage.mac.com/camp_asagiri/

●有度山トレイル三昧(12/19はミニトレランレース、12/20は有度山ロゲイニング)

静岡市と清水市の間にある日本平の秋の里山を堪能する二日間。トレランレースにはOSJ年間チャンピオン、静岡の望月選手も参戦を表明しています。

近日中にスポーツエントリーから申し込み可能になります。

http://www.sportsentry.ne.jp/top.php

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2009/10/12

ハセツネ:収穫と反省

①入りのスピード
 昨年は渋滞が怖くて、かなり入りのスピードをあげてしまった。これが中盤のエネルギー切れにつながっていると同時に、最後の筋肉疲労に来ている可能性があった。反面、ゆっくりしたペースで入った時のペース維持や渋滞にも懸念があった。そこで今年はゆっくりしたペースでの入りを心がけてみた。10-12時間のところに立ち、道路では周囲を敢えて追い抜かないペースで走る。
 入山峠で50分。浅間峠では、昨年を5分上回る3時間ジャストで走ることができた。変電所まで、渋滞とは言わないまでも流れが悪かったことを考えると上出来だ。10時間切りを目指すなら、このペースは、心持ち上げるので、十分。

②氷入りジュース
 ここ2回ばかりの長距離レースで試して、リンゴジュース(100%、クリア)を倍に希釈してみた。ただし12時に購入した氷1kgを入れたので、前半はもっと濃かったはず。味はマイルドで飲みやすい。何より適度な低温になっているので、水の吸収もよかったはずだ。最初は濃いめで、だんだん(2時間後まで)薄くなるのもちょうどよい。氷は表通りのいなげやで買える。

③どうせ、カロリーは足りない
 消費カロリーは多分7000kcalくらいだが、どうせこんなに食べられない。多分1/3食べるのも難しいだろう。元々、レース中に消化吸収されたグリコーゲンが大量に使われているとも思えない。
 そう思うと、まず重要なのは、脂肪の燃焼。これは市販品に頼ってバームを飲んだ。ここ3回のレースで試したが、昨年まで見られた低血糖による思考力と気力の低下防止には役立っているようだ。三頭山までは押していけた。
 どうせ、カロリーは足りないということ、そして、どのレースでも結局後半は胃が何も受け付けずになっていることを考えると、食料計画は大幅に見直す必要がある。

④食料計画
 甘いもの/しょっぱいもの、のコンセプトでドライフルーツとぬれおかきを選んだが、どちらもレース後半にはほとんど食べられなくなった。ドライフルーツなど、1/5も消費できなかった。いずれも味が濃すぎる。血糖値の維持は飴とかキャラメルのようなマイルドなものに頼るのがよいのかもしれない。
 最大の失敗は蜂蜜レモンを純粋なレモン果汁で薄めたことだった。率にしたら多分10%以下だったと思うが、意外なことに酸味が強くて、のどを刺激してそのままはき出してしまったくらいだ。結局今回はそれが胃の負担に拍車をかけた。例によって胃がもたれたが、最後の6km地点付近で、胃の中身を全部吐いてしまった。多分大岳以降のものはほとんど消化されていなかったようだ。今年は他のトップ選手でもジェルが受け付けず、吐いたという選手がいた。疲労と高濃度の食品は相性が悪いようだ。
 他の選手から聞いた、これは試すべしというのが、「おこわ」。僕も味の薄めのもちっとした総菜パンは両方とも重宝した。意外と自分で餅を小さくきって焼いて持ってくるのがよかったりして。
 これも試してみたいのは、コンデンスミルクのチューブ入り。これは高濃度だが、なんとなく牛乳ならいけそうな気がする。先週のアドレースでも、胃が痛んで、飲み物飲むのも億劫な時、自販機で買ったミルクティーは飲めた。このあたり、要検討。

④ザックとハイドロとの相性
 グレゴリーのルーファスに2Lのハイドロは大きくて納めにくい。1.5Lのハイドロにして、ボトルを持つというのも選択肢の一つか。特に御岳の先の自然給水で、出すと大仕事なので、入れたまま給水してザックをびしょびしょにしてしまった。もっと低温条件だったら、パフォーマンスにも影響したかもしれない。暑い気候だと、僕はここでの若干の給水が必要なので、そのために、350mlボトルを持つのも手。

⑤ヘッドライトとハンドライト
 CR123のあまりの高さにブラックダイアモンドのスポットを買った。家で闇夜を照らした感じでは違いがなかったが、実際にルートを走る時の明るさは大きく違う。なので、登りのちょっとした悪路だとハンドライトを使わざるをえなかった。それでも通常時はいいのだが、両手を使う難所では、ヘッドライトだけでなんとかしたいところ。やっぱりレースの時はプリンストンテックか。

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応援のファインプレー

 はせつねの最高峰三頭山さんから峠に降りて登り返し始めた真っ暗な中に一人の応援者がいた。コース上でも最も深い場所。こんなところに応援者がいるのだとびっくり。「ありがとうございます!」と挨拶を返すと、「あ、村越さん」という声、「え?」と声をあげると、「鏑木です」という返事。
 彼が「いろいろお世話になった人を応援しにいく」という話は聞いていたが、よりにもよってこんな場所とは。トップでもこの場所を通過する時には暗くなっているだろうから、顔は見えない。入るのも大変。でも、難所をすぎて、再び登りで選手が辛くなるところ。そして誰もいないからこそ、彼はそこを選んだのだろう。そんな地味なところに一人で立っている彼の胸中を察すると、目頭が熱くなった。
 レースを知り尽くした者だからこそできるファインプレーである。

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2009/10/11

ハセツネ装備の最終結論

覚え書きも兼ねて、今年の装備の最終結論
●食料
・ぬれおかき:昨年胃がやられた反省を踏まえて、脂肪が少ないがしょっぱいものにした。やや味が濃すぎるのが吉と出るか凶とでるか。
・ドライフルーツ:里山の残りに昨年好評だったクランベリーを足した。
・はちみつレモン:粘性を下げるために、レモン果汁を足して適度に薄めた。
・梅飴:上に上げたものはどれもこれも濃すぎる。少しづつ糖分を補給できるものとして。
・固形物:10時間越えランナーには、やはり固形物がないと不安が残る。ようかんとソイジョイ。しょっぱめの総菜パン。
・ジェリー:これも昨年、水分も食物もとりたくなくなった反省をふまえ、追加。まあ最後のおまじない。
・水分:写真にはうつっていないが100%のリンゴジュースを2倍に希釈(氷含む)。

●ライト、その他
・ライトは昨年同様のハンディーライト。また123のあまりの高さに閉口して、単4で光るブラックダイアモンドのスポット(だったかな?)にしてみた。
・いざというときのためのレスキューシートと足のケアセット。この他に携帯電話を携帯。
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Soubi

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2009/10/10

いよいよハセツネ

1週間前の疲れも表面的には収まり、週末がやってきた。いよいよハセツネだ。装備こそルーファスになったが、食品は一般的なものにこだわってみた。昨年は出そうと思ってふっていたらキャップがとんでしまった蜂蜜レモンもレモン果汁でさらに薄め飲みやすくして、ふたをテープでとめた。ボトルホルダーは、昨年使ったザックからルーファスに付け替えた。そんなちまちました作業が楽しい。

 身体の奥の方には気づかない疲労がたまっているかもしれないが、まあやってみないとわからないね。昨年・一昨年と課題だった、浅間峠から月夜見までの区間での低血糖が押さえられていたら、中身的には評価できるできといえるだろう。

がんばりましょう!

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2009/10/09

賢い身体

 4月に一緒に富士登山に行った縁で、パーソナルトレーナーの方と一緒にフィジカルトレーニングをした。自分でも弱いのは筋力と分かっていた。最近ほんとに遅まきながら、腰と体幹を中心にトレーニングを継続的にするようになった。その効果はランニングフォームや疲労軽減に出ているのは実感していたが、専門家にきちんと見てもらいたくて、この日のトレーニングとなった。
 トレーニング内容に特別なものはなかった。それは最初に相談した時の彼の話のとおりだった。しかし、腹圧を高めるとか、個々の動作でどこに注意するといった点は、実際に自分の動きを見ながらチェックしてもらわないと分からないことばかりだった。彼のアドバイス通りにトレーニングすると、ちょっとした動作でも効いているのが分かる。里山後の身体にはやや辛いが、不思議なことにトレーニング終了後は、身体がすっきりして、疲労感が残らなかった。気のせいか、頭もすっきり。
 僕は、地図読みという情報処理の点では、最大限の努力と工夫をし、賢くやってきたつもりだが、身体についてはまじめには取り組んでこなかった。それは地図を読み取る時に感じるちょっとした楽しさを、フィジカルトレーニングでは感じることができなかったためかもしれない。今日、わずかではあるが、「トレーニングって楽しいかも」と感じた。それはトレーニングに応答したささやかな身体の変化を感じることができたからだろう。身体が少しだけ賢くなった気がした。

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里山ハイライト

120kmノンストップ。本格的アドベンチャーレースである伊豆アドがなくなった今、里山は日本のトップグループのイーストウィンドのフラッグシップとなった。その分、気合いの入った容赦のないコースが提供される。マーケッティング的にはどうなの?という声も大きいが、どんな順位だろうと完走のロマンを感じられる数少ない大会である。
 (なお、地図については、http://www.tana.to/gps/を参照ください)

●CP5
 ラフティングセクションから二つめのCP5はMTBセクション前半のCPで、地形図で見るからに「上州の山」という感じの独特の偉容を誇る。レースブックによれば、林道に登山道の入り口の道標があるという。地図を見た時、途中まではきれいに尾根が張り出ているが、その先の壁のような急斜面からどうやって登れるのだろうと宮内と不思議がったが、レースブックを見て、「そうか、登山道が、この尾根の延長線上についているんだね」と納得。
 林道を進むと、ピンクの誘導テープがある。それを見て、「道標ないね」なんていいながら、尾根にあがれることを喜んで、林道をたどった。確かに林道は尾根にあがっているが、それ以上先は絶壁というところまでいっても登山道の痕跡は無かった。林内はきれいで通行できそうだった。とにかく尾根に登ろう。そう結論して道のない入りやすい場所を詰めていった。地図で張り出した尾根の部分までは順調だった。
 急斜面の部分まで来て唖然とした。正面両側は森の中の岩崖、そのさらに東は木さえ生えない絶壁で、西は深い谷になっていた。マウンテンバイクを持ってあがれるとはとても思えなかった。
 二つの崖の間にあるちょっとしたくぼんだ斜面を見ると、獣道がきれいについている。それは、崖の間で少し右に曲がっていて、その延長線上を見ると、そこだけ岩が棚のようになっていた。あそこをトラバースできるのかも?目で追って、シミュレーションをする。可能性はありそうだった。実際、行ってみると「落ちたらやばい」けれど、自転車を持ってもやばいとは実感しない程度の岩場であった。宮内のMTBを手伝って、無事通過。
 主催者が想定したのは、実際には林道をもっと奥までたどり、そこから登山道をたどるルートだった。この斜面は下見はしたが、「無理だろう」、と思ったという。GPSトラッキングを行なっていた主催者は、固唾をのんで僕らの行動を見守っていたことだろう。自分たちが「無理だ」と思う斜面にトップチームが引き込まれていく。敗退するのか、それとも困難を乗り越えるのか?GPSのマーカーは一時止まり、「滑落でもしたか!?」と思われたらしい。リザルトに書かれた「CP5の直登はお見事」が、彼らの興奮を物語っている。
(続く:予定)

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2009/10/07

ハセツネに向けて

里山アドベンチャーのレース中は、ハセツネを走ることなど考えられなかった。時々ふとハセツネのことが頭に浮かび、走る気持ちが萎えていった。完走すると現金なもので、なんかハセツネもやれるような気になってしまう。かたや36時間ノンストップ、方や71kmでせいぜい11時間。レースの性質は全然ちがうのに。

 しかし、里山が装備(特に食料)については、いいシミュレーションになったことは確かだ。

まず、バーム。2週間前のトレランといい、今回といい、最近長距離レースに出ると、よく低血糖気味で頭の働きがダウンすることがあったが、この2レースはそれが無かった。うまく脂肪がエネルギーになっているかのかもしれない。

甘いものとしょっぱい物

 毎年、行動食に甘い物としょっぱいものを選んでいる。これまでしょっぱいものとしてベビーサラミをもっていたが、どうも消化がよくない。純粋な炭水化物でしょっぱいものというと、せんべいとかあられが思いつくが、ぱさぱさして食べにくそう。コンビニで売っている磯辺もちなんかいいが、ちょっとべとつきそう。そこで思いついたのが「ぬれおかき」。スーパーにいったら175gパックで売っていた。約500kcal。炭水化物たっぷりで醤油味もいい。ただしちょっと味が濃い。後半は無理かも。

甘いものはドライフルーツを使っているが、昨年は酸味の強いクランベリーは食べられたがマンゴはダメだった。今回の里山ではミックスを持って行ったが、やはり中盤から味が濃すぎてだめになった。前半はいいとして、後半用にアメがいるだろう。どうせ後半は直接エネルギーとしては使われないので、適度に補給し続けることができればよい。

ハイドロにはリンゴ100%を2倍希釈してみた。これもまずまずだった。スポーツドリンクは、甘味料が耐えられなくなる時があるが、リンゴジュース希釈は穏やかな甘さで、飲み飽きない。水分は冷えていた方が吸収がいいので、もし天気がよければ1Lのジュースに500ccの水を入れ、それに500gの氷を入れてみようと思う。どの程度持つのだろうか?

昨年と同じように、市販のレモン入りはちみつ。コストパフォーマンスは最高だし、なんかヘルシーっぽい。そのままでは粘性が高すぎるので、レモンで希釈してもっていこう。これ1本でも、500kcalほどはある。

所詮、取ったカロリーがそのまま使われる訳ではない。筋グリコーゲンも200kcalくらいしかない。レース全体では5000-7000kcalくらい?どうせ足りないのだから、あとは血糖値を下げないように、こまめに少しづつとっていけばよい。

重要なのは、事前の食事と水分補給。

これは先週、スポーツ栄養学の本を3冊読んで、最大公約数をまとめてみた。

●72時間から48時間前までの高炭水化物食

 ということは木曜日の昼から金曜日の昼までが実は勝負だ。

 当日は朝普通より大目に食べ、さらにスタート2時間前くらいにパンを1個くらい。

●水は前日に十分給水。当日は朝食周辺で500ml、スタートまでに500mlを最低飲む。

さあ、がんばろう!

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2009/10/05

諦める理由はいくらでもあった:里山アドベンチャー完走の記

3年ぶりとなった里山アドベンチャー。その柔らかな響きとは対照的に、年々コースはハードさを増す。数年前は谷川岳に登り、「どこが里山だ!?」と皮肉られたが、今年も武尊登山がナイトセクションとして入っていた。おまけに120kmノンストップ。早めに進めば、1-2時間くらいの仮眠が取れるが、途中のCPには、トップチームの進行を妨げる容赦ない課題が挟まれる(スコアオリエンテーリングで、次への出発時間の19時までは、時間がある限りかポイントがなくなる限りポイントをとりに行かなければならない)。
 日頃の自転車でのトレーニング量の足りない僕は、ビバーク地点(といってもスキー場の駐車場)で既にへろへろで、スキー場への坂は、もっとも軽いペダルでもこぎ続けることができずに、歩く始末だった。この後、累積標高が1500mは越える武尊があり、さらに延々と課題が続く。レースを諦める理由はいくらでもあり、絶望的な気分だった。今の状態で武尊に上れるとはとても思えなかった。チームメンバーの小泉も、僕同様くたくただった。二人のうちどちらかがチームにとって60kg超の荷物になることも予想できた。ノンストップだから、休憩はせいぜい10分くらい。その状態で、明日は5kmのランとキャニオニング、カヌーに、それもいじめとしか思えないような、おそらく山道の担ぎだろうと思える標高差約450mのMTBでのアップヒル。自分の身体だけならゆっくりでも挙げられる。しかし、10kgを越える自転車を持ち上げるのは不可能に思えた。おまけに、一緒にトップを争っているチームは、こちらが15点ほどこぼしたスコアオリエンテーリングを完走しているらしい(後でガセネタと分かる)。つまり15分以上のビハインドをくらっている。
 極めつけは、疲労から、水や食料を一切口にしたいという気持ちがなくなってしまったことだ。血中グリコーゲンがあれば、疲労感があっても動けるし、動こうという気力を作り出せるが、それがなくなれば、本当にその時点で動かなくなる。比較的気温も高くなったので、水分補給がなければ、脱水のおそれもある。昨年のハセツネでも経験していたが、この二つは長時間のレースには本当に致命的になり得た。救いは、先週集中して読んだスポーツ栄養学の本だった。所詮筋グリコーゲンを全て動員しても2000kcal程度。脂肪が使えれば、少なくとも5万Kcalは備蓄がある。どうやら、脂肪は動員できているようだった。
 スタッフが「村越先生、ほおがこけてますよ。大丈夫ですか」と言われる中、武尊への登山道をよたよたと登りだした。ペースはゆっくりだった。少しでも無理をしたら、その瞬間に動けなくなってしまいそうだった。何度も小泉と宮内を待たせた。睡魔にも襲われ、時に0.5秒くらい意識を失うこともあった(これは、どのチームも似たような状態だったらしい)。そんな中で、宮内は一人だけ元気で気力があった。僕らを鼓舞し続けた。武尊の山頂に二つのチームの明かりが見えた。「他のチームも疲れているんですよ。」と宮内。そして、彼女は「こういう時は、チームの誰かがペースを作らないとだらだらしちゃうんです」といって、さっさと前を歩きだした。そのペースと、10分だけ取らせてもらった睡眠のおかげで、いくばくかはペースが回復した。また、彼女は僕と小泉の間を上下しながら、二人の荷物を「3人分はもてませんから」といいながら、交互に担ぎ上げた。彼女は民衆を率いる自由の女神のようだった。
 この事態にあって、もう一つの救いは、今この瞬間辛いと感じてはいなかったことだ。これはレース中盤から意識してやってきたことだが、その瞬間に辛いと感じるようなペースを続けたら、36時間のレースは持たない。そうなれば、僕はチームにとって60kgのただの荷物になる。どんなに叱咤激励されても、そのペースだけは守った。ここに至るまでも、できるところでは手を抜き、スコアオリエンテーリングでも登りで出戻るポイントでは、プライドを封印し、利己的だと責めるスーパーエゴを抑圧し、できるだけポイントに近づかない努力をしてきた。
 先のことを考えるのは止めにした。今はとにかく動けるのだ。どこかで身体が動かなくなるとしたら、その時、そこで止めればいいことなのだ。
 武尊のナイトトレッキングが終わると、翌朝のキャニオニング開始時刻まで、約1時間ほどの休憩が取れた。着替えや用具の詰め替えをすると、自由な時間は20分ほどだったが、その睡眠は大きかった。たった30分の休憩と10分の睡眠で、気力も体力も回復していた。昨日心配してくれたスタッフが「今日は、元気ですね!」と、端からみても分かるほどだった。僕は、ドラクロワの絵の下半分から上半分に上がってきた(注1)。
 そのCPでは、実はスコアでは僕たちのチームがダントツだということも聞いた。しかし得点差を考えると、予断は許されなかった。僕は400mは自転車担いで上れるくらいには回復していたが、小泉はどうだろう。また担ぎが不得意な宮内も、トレッキングの活躍で疲労していないだろうか?僕は登りで宮内を1回と、小泉を1回、自転車の担ぎでサポートした。小泉はそれで生き返ったようだった。ちょっとの休憩がよかったのかもしれないが、日頃のトレーニングがあればこそだろう。
 「これだけ担ぎで登らされたら、どんな楽しいダウンヒルが待っているのかしら?」とレース後コメントしたチームがあった。管理道の付き方と送電線下の地形を見れば、それは甘い観測だということが予想できたはずだが、誰もがそう思って、辛い担ぎを我慢したのだろう。コースクリエーターの田中陽希は、あくまでサディスティックだった。管理道は容赦なく急斜面を葛折りで下り、しっかり担ぎだった。

注1:ここは、http://blogs.yahoo.co.jp/haru21012000/56941829.html
あたりをご参照ください。

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