がんばれ井川観光協会!(南アルプス山行記10
8月11日、聖平小屋に到着したのは、もっとも混み合う15時ごろだった。受付に数人の列ができていた。愛想のよい小屋の主は、「まあ、お茶とクッキーでもどうぞ」と玄関にある、小皿を指さす。そのクッキーがおいしい。
愛想よさに嬉しくなって申込書を差し出すと、「やっぱり村越先生ですよね」と、受付の従業員。申し訳ないことに憶えていなかったのだが、今年の春の読図講習を受講した人だった。そういえば、「夏は井川の小屋で働いています」、といっていた人がいたなあ。若い男性と中年女性の二人。
19時のニュースに合わせて天気予報を聞かせてもらいにいくと、二人がくつろいでいた。中年女性の、「山を見る目が変わりました」という発言から、最近の登山者が「地図が読める」以前の問題だという話になり、そのまま主も交えて昨今の登山客の悪口で盛り上がった。テントを張りつつある登山者を名指しで、夕方到着するのが遅いの、あそこは登山道の上だのと、よほど鬱憤がたまっているらしい。
道迷いの話でも、さわら島に降りるはずが、反対側の便ケ島に降りて、戻ってきてもう一泊した客の話とか、どう見ても間違えると思えない聖平小屋の入り口の三叉路で小屋への入り口が分からず南岳まで言ってしまった登山者の話とか、登山の前線に立つ彼らだけに、最近の登山者の裏事情をたっぷり聞かせてもらい、ビールまでご馳走になった。
「そのうち、下山口までLEDの誘導灯を付けなくちゃならないかも」なんて、冗談めかしているが、実際この小屋では50mほど先のトイレへの道で迷う客がいたとかで、トイレまでは誘導灯がついている(そういえば荒川小屋もトイレは外だが、夜には街灯で誘導してある)。
この聖小屋、最後の日に世話になった井川の民宿の主によれば、井川観光協会のドル箱らしい。聖平、茶臼、荒川の3小屋で毎年250万円くらいの利益がある。今年はその利益を全部自主運行バスにつぎ込んでしまい、さらに250万くらい赤字なのだそうだ。運賃を取ればいいところだが、そうすると認可が下りない。それなら寄付ということにすればいいのに。赤字が出たら来年は続けられないだろう。来年存続のためなら1000円くらい寄付をする登山者はいくらでもいるだろうに。
うーん。残念。がんばれ井川観光協会!
聖平小屋もいまはとってもきれい。緑色のテントのあたりが、市毛良枝がテントを張ったあたりだとか・・・
こんなわかりやすい道標があってすら、小屋にたどり着けない人がいる。
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