女は地図が読めないか?
昨年登山研修所の研修会で取らせてもらったデータの分析を進めている。山野でのナヴィゲーションに関する18項目からなる質問を統計的手法でまとめると、「地図・コンパスの携帯」「地図の基礎知識」「ナヴィゲーションスキル」「コンパスの利用」「道迷い」という、妥当性が高いと思われるカテゴリが出てくる。自己評価の得点は、この順に下がってくる。つまりは持っていても地図のことを知らず、ナヴィゲーションに使えるかとなるとさらに肯定的な回答は減り、コンパスはもっと使えないということだ。かなり実感に近い結果だったので、すっかり満足してしまった。
その後、男女差と上記のカテゴリの関係を見た。男女差は明確にある。まあ当然の結果だと思って、気にもとめなかった。ところが、別の分析をしているとき、異なる結果がでてきた。
しばらく考えて、男女の経験年数の分布を見直した。明らかに違う。男性の方が経験年数が長い人が多い。ひょっとして男女差だと思っていたものは、経験年数の違い?
改めて経験年数が同一の男女を比較してみた。驚いたことに、そのとおりだった。さらに粘って、経験年数で分けて客観テストの成績を分析したら、こちらにも差がなかった。女は地図が読めない、これは少なくとも山の世界においては正しくない。
今度は経験年数によってスキルがどの変化するかを見た。結果はこれまた驚くほど綺麗にでた。利用暦0年では、全てのカテゴリにおいてスキルが低いが、「地図・コンパスの携帯」「地図の基礎知識」「ナヴィゲーションスキル」「コンパスの利用」の順だった。経験年数が1年になると全体的に向上が見られるが、特にコンパスの利用についての得点が上がる。さらに経験年数が2・3年になると、「地図の基礎知識」がぐっとあがり、地図・コンパスの携帯と遜色なくなり、頭打ちとなる。それが4年以上になると、向上は「ナヴィゲーションスキル」に及ぶ。しかし、ナヴィゲーションスキルもコンパスも4年以上になっても、地図の基礎知識のレベルまでは上がらない。地図やコンパスを実践的に使うという点では、現在の環境下では経験だけではなかなか進歩しないようだ。もちろん、これは一般的にそのような山行のスタイルが圧倒的ということとも無縁ではないのだろう。しかし、このことは同時に、ひとたび「現在地の把握」を問われたり、進路の維持の努力が必要な状況になると、彼らが容易に窮地に陥ることは想像に難くない。
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