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2009/05/31

尾根線谷線は読図の基本

平塚晶人さんの「2万5千分の1地形図の読み方」を読んだ時、失礼ながら、こんなに尾根・谷線をひくことを強調することはないだろう、と思った。しかし、その後初級者の講習をやってみても、また読図研究のためにデータをとっても、尾根・谷線がちゃんと引けることが読図の基礎であると同時に、かなりの人が普通の地形図上で尾根・谷線をひくことが難しいことが分かってきた。原理は簡単、しかし意外に正確に引けないのだ。

 今日の講習会では、山歩きする場所を事前に机上で尾根線・谷線を引いてもらった。会場は静大の裏山だが、地形が複雑でかなり難問だったが、正確に尾根線・谷線をひくよいトレーニングになったはず。

 問題図と解答図を載せたので、トレーニングにも使えます。

http://homepage2.nifty.com/navi-and-map/running2.htm

問題図のみここには掲載します(2,1と100の間あたりの尾根を中心に尾根線・谷線をひいてください)。

One090531

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2009/05/23

読図指導者研修

読図講習会は何度もやってきたし、最近では阿闍梨のメンバーもそれぞれに講習を行なう人が増えてきた。講習はやればやるほど講師もスキルアップする。それと同時に、何をどう教えれば受講者にとっていいものが提供できるかという悩みはが平行して増える。そんなことから、互いに教え方を見ながら、自分の指導を見直し、スキルアップしようという趣旨で阿闍梨スキルアップ研修を行なった。

 外部からも4名の参加を得て、10名が参加。それぞれに着目点は違いつつも、読図を教えることに対する思いが感じられたのは収穫だった。とりわけ外部から参加したIさん。もともと写真を撮るために山に登っていたというが、本格的に読図をやりだして約1年。しかし多くの講習に参加するとともに、とにかく自己学習で、仲間内に読図を教えるまでになっている。そのための冊子や地形模型まで作り、またその作業を楽しんでいるようだった。こういう人たちと出会うこともまた、講習会の楽しみの一つなのだ。

Sany0143

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2009/05/21

8年目のスタートライン

 最近、初心者向けの読図連載記事を執筆したり、改めて自分の読図の指導を見直す機会を与えられた。もちろん、これまでの講習会だって、常に出来る限りの知恵と工夫を絞って臨んだ。参加者からのフィードバックも悪くない。しかし、本当に初級者にとって分かりやすい情報を提供しているのだろうかという思いに駆られる。大学での研究領域でも、もう一度「学習」のことにきちんと取り組み直してみようと思い始めたからかもしれない。あるいは、自分自身がアマチュア無線の3/4級を取ろうとして、たまたま本屋にあったテキストを読みながら、初心者の気分を味わっているからかもしれない。ウェッブでの通信教育用のテキストを準備中で、読み返す度に説明の飛躍に唖然とする。

人が読図を学ぶ時、どんな知識を獲得し、それをどう使うことで僕たちエキスパートが行なっているような読図に達するのだろうか?まだまだ考えなければならないことは多いし、それによって講習の仕方にも工夫の余地がある。今日の講習でも、最新読図術を出して「読んでます」という受講者に出会った。少し申しわけない気分になって「難しいでしょう」というと、「3回読みました」という。今なら、1回で分かった気にさせるテキストが書けるだろうし、スキルを求めている彼らにはそれでいいのかもしれない。同時に、3回考えさせるテキストも決して悪くないのかもしれないと思う。結局、使う人自身が本で得られたアイデアと格闘しない限りは、グレイゾーンが支配する自然環境の中で地図を適切に使えるようにならないのかもしれない。本でも講習でも、獲得のための道具を提供するべきなのだろう。

最新読図術から8年。ようやくスタートラインに戻ってきた気がする。

 

 

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2009/05/18

初心者指導から分かること

 4月からヤマケイで始めた連載のために、第二回の取材ハイキングを行なった。西武秩父線の西吾野から吾野までのコースで、特に後半は、地図には道が描いていない。その道も、ある時は尾根に沿い、ある時は巻き道になる。さらには地図にない脇道も盛りだくさん。ということで、2回目を行なうには絶好のコースだ。  初回は地図記号すら怪しかった菊野さんだが、今回は尾根・谷は基本的には読める。「この先のルートはどんな特徴か?」と質問すると、「鞍部がある」とか「ピークがある」くらいの答えは返ってくる。このくらいのレベルが初級者が陥りやすいトラップを把握するのにちょうどよい。実際、随所で「ああそうそう!」というトラップにひっかかってくれた。  第一に気づいたのは、地形を要素としては把握できるがその定量的な把握ができないことだ。ピアジェに言わせれば位相幾何的空間認識の段階ということなのだろう。ピークや鞍部があるというのは分かる。ではその鞍部やピークはどのくらいの大きさか?これは等高線を読めば数値化できるので、数値に対するイメージがあれば、その大きさを想像できる(たとえば等高線3本なら約30mとして7階建ての建物くらいとか)はずだが、まずできない。これができないから、隠れたピークや鞍部にすぐひっかかる。  第二に、ルートの方向がどのように変化しているかということに対して驚くほど無頓着だ。これは別に彼女に限ったことではないだろう。あらぬ方に下って発見されるといった道迷いの事例の背後にも方向への無頓着さがあると思う。これは、部分的には遠くを見ることで解決できる。遠くを見れば方向の基準になる山頂や目印が見える。それによって、自分がその方向からどれくらい反れたかが感覚的に把握できるはずだし、間違えた尾根に入ったことなどもすぐ気づけるはずだ。  第三に、現在地把握のために自発的・連続的に特徴を利用できていない。これは指導者としても留意すべきことなのだが、指導場面では、分かりやすい目印が見え、解答が確実に出る場所で質問をする。ところが現実にはそういう場所ばかりではない。そこで現在地を把握するためには、今見ているものだけではなくて、自発的に途中で見たものを選びとって、それを現在地の把握に利用しなければならない。与えられた課題から自発的な課題設定とそのための準備への脱皮。初級者卒業の鍵は多分こんなところにあるのだろう。  もう一つの収穫は、こうした初心者の特徴にこれまで十分配慮してはこなかったことに自分自身気づけたことだ。伝説の授業名人、斉藤喜博の「授業入門」を読んだばかりだったからかもしれない。初心者がつまづくところにこそ、指導の重要なヒントがある。

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2009/05/10

新しい2年へ

 JOAの総会と理事会が終わり、役員が改選された。オリエンテーリングの日本導入以来様々な形でこのスポーツの発展に関わり、最後の4年は会長を務められた長谷川氏が退任された。新しい会長になられたのは、山西哲郎さん。市民ランナーなら知らない人はいない、いわば教祖的な存在である。陸上の長距離の世界では活躍されてきたが、その流れの中にいながら、トレイルランニングという言葉すら形もなかった1980年代から、陸上界では異端とも言える自然の中でのランニングを提唱し、そしてその裾野をじわりじわりと広げたのが山西さんだ。20代のころ、彼の代表著書「走る世界」を熟読したころを懐かしく思いつつ、その彼と一緒に仕事ができることを光栄に感じる。競技スポーツとアウトドア活動の狭間で時に身動きがとれなくなってしまうオリエンテーリングに、必ずやなんらかのインパクトを与えてくれるに違いない。
 間違いなくこの2年も厳しい道のりになることだろう。それは前に進もうとすればこそである。

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アウトドア界の大御所から自然流ランニングの「教祖」へ。象徴的な会長交代になるのだろうか?

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2009/05/09

乾杯!完敗?

 スキーO世界選手権の打ち上げに出た。苦楽をともにした運営者たちと成功裏に終わったイベントの打ち上げをするのは、ささやかなご褒美ではあるが、下心もあった。お目当てはチーム的場と清水さん。清水さんには来年のアジア選手権の受付をお願いして、何の躊躇もなくOKされ、かえって拍子抜け。打ち上げの席で、すでにPC見ながらブリテンや申し込み用紙について、あれやこれやの議論を始めた。「もうだいたい流れは分かっているので・・・」と清水さん。状況を簡単に話すと、受付上の問題点をその場でいくつか列挙してきた。
 チーム的場は後継者として井上君を指名してきた。修羅場をくぐりながら、着々と後継者を育成しているあたり、さすがチーム的場は抜かりがない。明日のJOA理事会のため、新宿に泊まり、すかさず二人にブリテンの草稿を送ろうとメールを開くと、すでに的場から、アジア選手権用のファイルスペース開設の知らせが来ていた。的場先生、完敗です!

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2009/05/05

グレイゾーン

 重要な国際大会がルール通りに実施されるのは当然のことだが、2000年にワールドカップ技術統括として、国際アドバイザーと協同作業をした時、彼らが特に地図の解釈に関して柔軟な考えを持っていることにある種の驚きを憶えた。地図にはもちろん国際規定がある。しかし、国によって異なる地表面を解釈する時、「この表現は絶対にありえない」「この表現はよい」という2分法は適切ではなく、その中間にコンテクストによって解釈を変えてもよいグレイゾーンがある。

 失格に対する裁定員による最終判断でも同じような経験をした。規則違反は「適切ではない」ことではあっても、即「だめ」という訳ではない。裁定員はその「適切ではない行為」によって公平性が損なわれたかどうかを判断し、それによって失格かどうかを決定する。優勝チームによるウィニングランは、規則によればレースを終了したものが再びテレインの中に入るのだから、厳密によれば失格である。しかしそうならないのは、それが公平性を損なわないからである。上位2チームが競りあって帰ってきた時に、ウィニングランをしたら失格になる可能性がある。グレイゾーンをどう扱うかは、エキスパートの仕事の一つの指標になり得る。規則を知り、それを適用するスキルを持つことは上級者として当然のことである。グレイゾーンをコンテキストに応じて的確に処理できて、初めて達人と言える。

 10年以上かけて少しづつ自分の中で結晶していったこのことを、今回のイベントアドバイザークリニックの締めくくりの言葉とした。地図規程、規則、いずれに対してもイベントアドバイザーは的確だ/的確ではないの2分法だけで処理するのは適切ではない。その間にグレイゾーンを設定し、それに対して柔軟だが一貫した視点を持ちながら対応していくこと、それがアドバイザーが存在する理由でもある。 そうやって言語化してみると、同じことが危険認知を考える上でも重要なキーポイントになっていたことを思い出した。世の中には「まあ安全だ」「間違いなく危険だ」ということはある。しかしその中間に果てしないグレイゾーンがある。事故が生まれるのはえてしてそういう領域なのだ。グレイゾーンとその対応という考え方は、僕の周りにある多くのものを解く鍵になるような気がしてきた。

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2009/05/03

これぞコンパス

IOFのイベントアドバイザーのクリニックの最終日、参加者一人一人が中国の連盟から修了証をもらった。僕も中国協会と香港協会から記念の品をもらった。中国オリエンテーリング協会がくれたのが、「司南」つまりはコンパスの原型になったスプーンである。前に読んだ本では、水の上に浮かべと書いてあった気がするが、これはニッケルコバルト製のスプーンを方形の台の上に載せると、必ず柄の部分が南を指すようになっている。
 ほぼ2000年前に発明されたそうだ。中国では基本的には占いの道具で、航海の道具として使われたことはないようだが、コンパスの原型であることには間違いない。ナヴィゲーションの指南役としては、何かと話題作りに使えそうな一品である。今度の講習会には、「こんなコンパスもあります」と紹介してみよう。
 「横綱」みたいに、これを使っても負けない選手は文字通り「司南」とかね。

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▲中国の会長さんから司南をいただく

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▲これがコンパスの原型。柄の部分が南を指している。

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2009/05/02

安息の地

 いつかはIOFの理事になるべきだろうと思っていたが、まだそれが現実的ではなかった2000年に、僕をIOF理事として強く推薦してくれたのは香港の友人たちだった。その後もその仕事を評価するとともに、一緒にアジア地区のオリエンテーリングの発展に対して仕事をしてきたのも彼らだった。数々のジュニアのトレーニングキャンプ、そしてAPOCなどで彼らと協同作業を行なってきた。そのいずれもが達成感に満ちた楽しい仕事だった。中国の台頭は独立してあっただろうが、彼らとの協同作業がなければ、アジアのオリエンテーリングは少し違ったものになっていたかもしれない。 今回の、中国で3日間英語で講義と演習を行なうというIOFのイベントアドバイザークリニックを担当した。準備は多くの時間とエネルギーを費やすものだったが、彼らとの協同作業だと思うと、あまり苦にもならなかった。クリニックも2日間が終わった。さすがにくたくたになった。しかし、演習で鋭い意見や視点を提供できる若い参加者を発見すると、苦労が報われる。ハードな日程にもかかわらず、香港と中国はまたしても安息の地であった。

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▲まじめに講習&演習

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▲夜にはちゃんとオフ・タイム

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▲日本から参加した船橋さんもがんばってます

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