エール
毎年12月になると、新潟から洋なしが送られてくる。20年以上前のハンガリーの世界選手権の時以来洋なしファンになったが、日本ではずっと高級品だった。最近はだいぶ一般にも出回るようになったが、Nさんの農園の洋なしはひと味違う。
送り主Nさんと出会ったのは、僕がオリエンテーリングを始めたばかりのころだった。当時既に少壮のオリエンティアだった彼は、当時のオリエンティアにしてはくせの強い人物に思えた。僕たちが所属していた東京OLでは「新潟支部長」と呼ばれ、ユニークな活動もしていた。まだMTB-Oもないころから独自にMTBを使ったオリエンテーリングにもトライしていた。
僕が一人前のオリエンテーリング競技者になったころ、一度だけ彼から「村越さん、いつか新潟に」と言われたことがあった。当時の新潟にはオリエンテーリング活動はほとんどなく、いく理由が見つからなかったが、いつかは新潟に行ってみたいという思いが頭の片隅には常にあった。
1990年代に入り、静大でのコーチングに初めて行き詰まりを感じたころ、パソコン通信で知り合った新潟大学の学生に合宿を「押し売り」したところ、すかさず「買ってくれた」。メールの文面から彼らの熱意を感じたことはもちろんだが、Nさんの言葉が後押しをしてくれたことは間違いない。Nさんは仕事の合間に合宿を訪問してくれた。約束をした訳ではないのに、彼に対する約束を果たしたような気がした。
それから15年以上の間彼とは一度も会っていないが、毎年律儀に洋なしが送られてくる。それは僕に対するエールのように思える。
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