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2008/10/13

目標達成の快感

 昨年はそれ以前に一回低血糖でダウンしていたので、月夜見から先辛かったという記憶がないが、今年は練習量からして月夜見までは順調にいけるだろう。ロングトレイルに滅多に出かけないアスリートにとって、ハセツネは月夜見から先が勝負になる。筋持久力の限界を超えたところでどれだけペースを維持するか、あるいはペースが落ちるのを最小限にとどめるか。前半は渋滞に巻き込まれないペースを維持するとともに後半に向けてできるだけダメージを受けないことを配慮しながらスタートした。
 スタートでは前に並びすぎた、山道に入る段階で昨年は見えなかったトップも見えている。心拍数は160超で、時に170を越える。レースの精神的な影響はあるにしても、高すぎる。変電所に降りるあたりで、間瀬さんに抜かれた。周囲にいる人を見ると、どう考えても10時間を切るのが目標の人ばかりである。
 入山峠は、単純比率で計算したタイムより10分ほど早い。ロード区間はあるが、登りは多いから、多分早すぎるのだろう。醍醐丸からの下りで、イーストウィンドの陽希に追いつかれた。彼も入山のタイムからやっぱり10時間を切るペースだという。登りでは手を積極的に使い、下りではなるべく設置のダメージを受けないようにしながら、それでペースが落ちる時には抜かれるに任せた。
 昨年は低血糖で通過した浅間峠だが、今年は水・木にしっかり食べられたおかげで身体は動く。しかし、血糖値が下がっているのか、貧血気味なのか、頭がほとんど働かなくなってしまった。この状態で三頭山以降の下りにさしかかってしまったら、ペースダウンは必至だろう。月夜見用にとっておいたコカコーラのボトルを開けた。封は切ってあったが、それでもさんざん揺すっていたので、シャンパンのように吹き出した。1/4を失ったが、味の違う飲み物は気分転換になった。
 昨年は些細な登りでも全て歩いた浅間峠から三頭山までの区間でもまずまずのペース維持ができた。三頭山への中腹で、どうですかと声がかかった。相馬さんだった。下りが全然走れないという。まだ腰の調子が悪いようだ。抜かれはしたが、三頭山からの下りで、「そろそろ」という感じで動いている相馬さんに再び遭遇。思わず「ドンマイ」と声を掛けてしまった。
 月夜見には予定の7時間30分よりも20分ほど早いタイムで到着した。まどか・すみちゃんのぽんぽん隊と利佳ちゃんが応援してくれた。止めようと思っていた昨年は10分は話し込んでいったが、今年はこの時点ではまだ好調で、給水を受け、予備食料をウェストポケットに入れ替えると、すぐに御岳に向かって動き出した。あと1時間20分動けば大タワで、そこまでくればあと20km少々だ。
 三頭山は地獄だった。延々続く400mのアップ。6時間も走ったweekend warrierには辛い。手を積極的に使って登るが、上半身の方もぐったりしてきた。途中、なんど「このまま横になって休みたい」という誘惑に駆られたことか。その度毎に「こんなチャンスは滅多にないかもしれない。このチャンスを逃してはいけない。逃さなければ、もっといいチャンスが巡ってくるはずだ」と自分を鼓舞し続けた。ただ限界に来ているのは筋持久力だけのようで、筋肉痛、筋負荷による痛み、腰、膝の痛みは全くでない。もちろん下りの一歩一歩は膝にくるが、危険を感じるような痛みではない。積極的にスピードを上げた。
 昨年はなかなか離れることができなかった大タワだが、今年は用をたしただけですぐに離れた。大岳までは登りはあるが、小刻みなので、そうは辛くないはずだ。
 大岳からは下るだが、そこまでの下りは結構きつくて、筋力の落ちた身体ではなかなかスピードを上げられない。おまけに疲労のせいか、食料のせいか、食欲がないどころか、1.5倍に希釈したスポーツドリンクさえ飲みたくなくなり、胃のあたりがむかむかしてきた。御岳手前の水場で飲んでみると、水ならおいしく飲めた。今後に備えて、コカコーラのからボトルに水を入れた。
 第三関門には宮林さんがいた。月夜見までは知人、知らない人を問わず、昨年より遙かにたくさんの応援者がいて励みになったが、それ以後は応援のないレースだったので、勝負どころで応援されるのは嬉しい。
 日の出への登りは昨年ほどではないにしても辛かった。ここで登りが最後というのを唯一のよりどころにして登る。ここからの下りが最後の我慢のしどころか。距離と残り時間を考えると、脚が止まらない限り11時間を切れるだろう。ダメージが残らない走りを考えながら、ちょっとの登りは我慢して走る。
 あと5kmのところに来ると、いつものように多摩オリエンテーリングクラブの高橋さんがいた。最後の踏ん張りどころで知人がいるとほっとする。11時間まで40分以上ある。13時間あたりの昨年はこのあたりでも周囲にたくさんの人がいたが、今年は時々抜いたり、抜かれたりする程度だ。最後の林道に出るあたりでも、ほぼ同ペースの選手が一人いたくらいだ。ここまでくればあと2km弱のロードのみ。11時間を切れました、というよりもむしろ10時間代でした、と堂々と言えるタイムだろう。結果は10時間42分で男子総合92位。
 一部で話題になった(?)軽量ザックだが、機能的には全く問題なかった。練習の時はウェストポーチが揺れるのがやや気になったが、実際のレースペースでは全く支障はなかった。背中があたる、ショルダーストラックが痛い等のトラブルもなかった。まずは改良成功というところか。アクシデントが一つあった。蜂蜜レモンのフラスコを薄めようと、水を入れて勢いよく振った途端、キャップが吹っ飛んでいってしまったことだ。入山峠の前だっただけにどうしようと一瞬思った。しかし蜂蜜は粘性が高く、ふた無しでも支障なかった。
 軽量化には逆行するが、使い勝手という点ではウェストポーチの内側にゴミ入れがあるとよいと思う。厚みはなくていいし、ベルクロで中央だけが止まっていればいい。ゴミはレース中意外にやっかいなものだ。食べたものとそうでないものをより分けるのがだんだん面倒になってくる。もちろん、捨てるのは論外だ。そのうえ、ジェルや羊羹のからは一緒にしておくとべとつく。これこそ石川さんに率先して取り入れてほしいアイデアであった。

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コメント

 数年前の不調が嘘のような快走でしたね。おめでとうございます。不肖の弟子としても嬉しい限りでした。いつか師匠とツールドモンブランに出場するべく修行しておきます(笑)。
 朝霧高原も楽しみにしています。

投稿: kyoda | 2008/10/14 20:09

絶好調という訳でもなかったんだよ。でも練習の重要性を改めて実感できてよかった。目標を達成すると欲も出るね。
 自分でも今の生活の延長線上でもまだまだ改善の余地があることが具体的によくわかりました。

投稿: shin | 2008/10/15 08:26

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