コード・ブルー
ドクターヘリに登場する医者を目指す4人の若者の挑戦と苦悩を描く「コード・ブルー」が始まった翌日、僕は道迷い遭難の講演のため全国遭難対策協議会に参加していた。午後の分科会の一つがヘリによる救助に関するもので、地元の防災航空隊が救助活動のビデオを見せてくれた。
ヘリは、緊急を要する山岳遭難のダメージを最小限にする最後の砦だが、万能ではない。霧や雨の中で救助を諦めるシーンは山岳救助隊マンガ「岳」にもよく出てくるが、風が強くてもホバリングができないので、どんなに天気がよくても高度の高い尾根線での救助活動は命がけだ。東三河の山間部での遭難では、好天なのに風速30m近い風で遭難者のいる場所に近づけず、その300m下の尾根をやむなくピックアップポイントにしていた。この時の遭難者は気胸のため、ドクターヘリも救助に向かったが、性能的に劣るドクターヘリでは現場に近づけない。防災ヘリが遭難者をつり上げ、茶臼山の駐車場でドクターヘリにランデブーするも、強風でドクターヘリが飛べず、結局処置をしてもらって、防災ヘリで病院へ搬送といったコラボレーションのケースも紹介された。
強風にも弱いが、無風にも弱い。一端着陸してしまうと、特に高山では無風で飛び上がることが難しい。乗鞍での救助の例(東海3県1市は相互救助を行なう)では、飛び上がれないので隊員を一人置き去りにして(この隊員はいつも置き去りにされる役なのだと、隊長が笑っていた)、それでもなかなか上がらない。隊長自らが降りようかと思ったときに追い風に乗ってようやく離陸するシーンが出てきた。
アメリカの救助活動のマニュアルに、樹間に隠れた動かない遭難者はヘリからの発見率が0%(つまり確実に見つからない)というデータが出ていたが、実際にもそうらしい。そんな時、昼間なら煙を上げる以外では、可能な場合には木を揺するのが一番発見しやすいのだという。1mの樹間があれば、ホイストで隊員をおろして救助できるだけの訓練をしていると、隊長は言い切った。
ビデオを見せてくれた隊長と副隊長が、短髪にきりっとした顔立ちで、いかにもフィジカルエリート然としている。TVドラマ「コード・ブルー」を越える世界がそこにはあった。
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