ピッケルとアイゼン
小さいころ寝室に使っていた小さな部屋には、大きな棚に父が訓練で使ってたテントや寝袋、ピッケル、登山靴があった。あまりにも当たり前のように存在していいたので、そういう道具は一家に一つはあるものだと思っていた。そうではないということを悟ったのは、大学に職を得て、野外活動を教えるようになってからだ。
冬山にいくことになって、家にあったピッケルのことが思い出された。あれから我が家は4回の引っ越しを経験しているから、もう処分されているかもしれない。そう思って電話すると、まだ残っていた。昔のものだから重いが、スイス製のいい品物だという。
「冬山をやろうと思っているんだ」というと、父の方から「送ってやろうか」という。ピッケルとアイゼンを送ってもらうことにした。風邪をひいて元気のなかった父の声が、心なしか嬉しそうだった。
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